年頭の辞 河原畑九州運輸局長

令和4年 年頭の辞

九州運輸局長 河原畑 徹

明けましておめでとうございます。
令和4年の年頭にあたり、謹んで御挨拶を申し上げます。

まず、昨年の「令和3年8月の前線等に伴う大雨」等により被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。九州においては毎年のように甚大な被害を及ぼす自然災害が発生していますが、これら被災地の復旧・復興に向けて、九州運輸局の職員一同、被災者の皆様に寄り添いながら、全力で取り組んでまいります。
また、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、人の移動が事業存立の前提である運輸業・観光産業は、外出の自粛や新しい生活様式の浸透により利用者が激減し、かつてない程に深刻な影響を受けています。加えて、昨秋からの急激な原油価格高騰も重なり、コロナで疲弊している運輸業・観光産業への更なる影響が懸念されています。九州運輸局としましては、今後も引き続き、九州の運輸・観光事業者の利用動向や経営状況を注視しながら、関係自治体とも連携して、事業継続、需要喚起や感染拡大防止に必要な支援・助言等を行ってまいります。

さて、新年を迎えまして、九州の運輸・観光行政に関する抱負を申し上げます。

第一に、九州における観光の振興を推進してまいります。

国内では新型コロナウイルスの感染状況は落ち着いていますが、世界的にオミクロン株の感染が広がりつつある中、インバウンドについては、再開を見通すのが難しい状況にあります。このため、まずは感染拡大防止を図りつつ、国内観光需要の喚起を図ってまいります。
これまで行ってきた同一県内旅行への割引に加え、隣県からの旅行も支援対象とするとともに、「ワクチン・検査パッケージ」を活用して安全・安心の確保を図りつつ、感染状況等を十分に確認し、専門家の意見を踏まえながら、地域ブロック内での旅行、さらには全国規模での「新たなGo To トラベル事業」へと、段階的に支援対象とする旅行の範囲を拡大してまいります。
あわせて、ウィズコロナ・アフターコロナを見据えて、地域の関係者が連携して実施する宿泊施設を中心とした観光地のリニューアルや稼げる地域の看板商品となる観光コンテンツの磨き上げ等を通じた観光地の高付加価値化等を戦略的に進め、旅行者の長期滞在や消費拡大、リピーターの増加等に向けた取組を推進してまいります。
本年秋には、九州新幹線西九州ルート(武雄温泉・長崎間)の開業が予定されています。開業効果を沿線地域のみならず九州全体でしっかりと取り込み、地域の活性化につなげられるよう必要なサポートを行ってまいります。
インバウンドの段階的回復に備え、外国人旅行者がストレスフリーで快適に旅行を満喫できる環境及び安全・安心な旅行環境の整備を図るため、多言語での観光情報提供機能の強化、無料Wi-Fiサービスの整備、キャッシュレス決済の普及、バリアフリー化の推進等の取組を支援してまいります。

第二に、持続可能な地域公共交通の実現を目指します。

公共交通による移動の円滑化と利便性の向上のため、「交通政策基本計画」(昨年5月改訂)に基づき、「①誰もが、より快適で容易に移動できる、生活に必要不可欠な交通の維持・確保」「②我が国の経済成長を支える、高機能で生産性の高い交通ネットワーク・システムへの強化」「③災害や疫病、事故など異常時にこそ、安全・安心が徹底的に確保された、持続可能でグリーンな交通の実現」に向けた取組みを進めます。
近年、人口減少・少子高齢化やマイカー依存の進展等により、九州各地の鉄道、バス等は利用者の減少が続いていましたが、今般の新型コロナウイルス感染症のまん延により、地域の暮らしと産業を支える公共交通サービスの確保・維持は厳しさを増しています。各地域の実情・ニーズに応じた移動手段を持続的に確保していくため、各自治体における地域公共交通計画の策定、利用者利便の向上に資するMaaS、AIを活用したオンデマンドバスの導入等の取組をサポートしてまいります。また、各地域の現場に広く目を配り、既存の制度にこだわることなく柔軟な対応を行ってまいります。
安全・快適で利用しやすい移動環境を整備するためには、バリアフリーの観点も重要です。昨年、九州運輸局では、高齢者や障がいをお持ちの方々にもストレスフリーで快適な旅行環境を実現するため、九州各県のバリアフリー旅行相談窓口のネットワーク化を図りました。今年も、このようなユニバーサルツーリズムの取組を更に進めてまいります。
地球温暖化対策も待ったなしの課題です。2050年カーボンニュートラルや気候危機への対応など、グリーン社会の実現に向けた「国土交通グリーンチャレンジ」(昨年7月とりまとめ)に沿って、自動車の電動化への対応、新技術を活用したスマート交通やグリーン物流の取組を分野横断・官民連携して進めてまいります。

第三に、人材確保と生産性の向上に積極的に取り組みます。

近年、運転手や技術者の高齢化や技能者不足が深刻化しており、人材確保・生産性向上による対応が急務です。
九州運輸局では令和2年に開設した「九州運輸局人材確保・育成対策応援サイト」をはじめ、関係行政機関等との連携を強化し、関係業界に関する情報発信を行ってきました。また、「働きやすい職場認証制度」を活用し、労働条件や労働環境の改善、運転者の確保・育成を推進してきたところです。
昨年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、関係行政機関等とも連携しながら、雇用の維持・確保に向けた取組を行ってきました。本年も、感染の状況や各事業者における雇用の状況等を踏まえながら、運輸・観光業における人材確保に取り組んでまいります。
物流分野については、「総合物流施策大綱」(昨年6月改訂)における3つの方向性、「①物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流)」「②労働力不足対策と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物流)」「③強靭で持続可能な物流ネットワークの構築(強くてしなやかな物流)」に沿って、大綱に基づく政策の実施及びその周知に加え、九州の地域特性を踏まえたモーダルシフトの推進等の取組を後押ししてまいります。
海事分野については、造船・海運の競争力強化、船員の働き方改革、内航海運の生産性向上等を目指す「海事産業の基盤強化のための海上運送法等の一部を改正する法律(海事産業強化法)」(昨年5月公布)に基づき、共同事業の実施や事業再編、生産体制の見直し、次世代技術の開発等を通じて、海事産業全体で好循環を生み出すための取組を推進してまいります。

 第四に、国民の皆様が安全・安心できる輸送環境の実現を目指します。

安全・安心な輸送環境の実現に向けては、まず交通事業者の事故を最少化しなければなりません。また、交通業界全体で飲酒運転や危険運転に関する規制が強化される中、関係事業者においては、より一層の安全対策を講じ、事故防止の推進をお願いします。九州運輸局としましても、保安監査や運輸安全マネジメント評価等に積極的に取り組んでまいります。
鉄道分野については、毎年のように自然災害により九州各地の鉄道施設で甚大な被害が発生し、現在もなお、一部区間で運転を見合わせていることから、関係自治体や鉄道事業者との議論を進め、どのような支援が可能かについて検討してまいります。昨年多発した列車内での傷害や放火事件については、警察と連携した巡回等による警戒監視、防犯カメラ及び非常通報装置の適切な運用などのセキュリティ確保を促進してまいります。
自動車分野については、「事業用自動車総合安全プラン2025」(昨年3月策定)を踏まえ、依然として発生する飲酒運転や健康起因事故等への対策を進めるとともに、重傷者数や各業態の特徴的な事故に対する削減目標の達成に向け関係機関と一丸となって取り組んでまいります。また、近年急速に開発・活用が進む自動ブレーキなど自動車の技術革新に対応するため、令和6年10月以降の継続検査から行う予定のOBD(車載式故障診断装置)を活用した新たな自動車検査制度が円滑かつ適正に開始できるよう準備を進めてまいります。
海上交通については、海事産業強化法の趣旨等を踏まえ、船舶検査、運航管理監査、外国船舶監督、船員の海技資格・乗組体制の審査等を的確に実施します。また、本年2月から小型船舶におけるライフジャケット着用義務に違反した船長に対し違反点数が課されることから、安全指導や各種講習会の内容の見直し等により啓発活動を強化する等、一層の安全確保に努めてまいります。

 以上、4つの項目について、「運輸と観光で九州の元気を創ります」をキャッチフレーズに、職員一丸となり、取り組んでまいります。

 昨年7月に就任以来、九州全県の各地域に足を運ばせていただき、各地方自治体の首長や運輸・観光事業者の方々の声を直接伺ってまいりました。こうした皆様方からの声を聞いたり、自分の目で見ることで、私自身も九州出身ですが、九州各地の魅力を改めて再発見したところです。
今後も積極的に九州各地を回り、事業者や地元の皆様と同じ目線に立って汗をかきながら、地域にとっての「最適解」を共に考えてまいります。

結びに、新型コロナウイルス感染症の一刻も早い収束、そして、九州の発展と皆様方の御健勝と御多幸をお祈りして、新年の御挨拶といたします。

2022年01月04日