年頭の辞 岩月九州運輸局長

年頭の辞
九州運輸局長 岩月 理浩

新春を迎え、謹んで御挨拶を申し上げます。

昨年の豪雨災害により被災された方々に、心よりお見舞いを申し上げます。
熊本地震や九州北部豪雨からの復旧・復興は着実に進んではいますが、まだ道半ばの状況にあり、これら被災地の復旧・復興に向け、九州運輸局職員一同、引き続き取り組んでまいります。
災害対応は初動が重要であり、九州運輸局としましても、災害時には積極的に職員を各県庁に派遣しています。また、正確かつ速やかな情報発信が可能となるよう、ツイッターアカウントを開設するとともに、昨年11月には災害時に運輸局として果たすことのできる支援内容をまとめた「災害対応・復興支援に対する取組」を取りまとめ、地方公共団体へ周知しております。今後とも平時より関係者間の連携を密にするとともに、災害発生時には迅速な対応ができるよう努めてまいります。

さて、年頭に当たり、九州の運輸・観光行政に関する抱負を述べさせていただきます。

まず、地域公共交通の維持・活性化について、着実に取り組んでまいります。
九州においても、人口減少・少子高齢化や自家用車への依存等により、特に地方部における鉄道、バス等の利用者が減少していますが、通勤・通学手段の確保、免許返納後の高齢者の移動手段の確保等の観点から、地域公共交通の維持・活性化は不可欠であると考えております。他方、地域公共交通活性化再生法の施行から10年が経過し、公共交通を取り巻く環境が変化していることを踏まえ、本年の通常国会を目指して同法等の見直しが検討されています。関係審議会での検討案では、地域公共交通に関する計画の策定を地方公共団体の努力義務と位置づけることで、より一層、各地域の交通に関係する全ての者が相互に協働・連携することを求めていくこととしております。九州運輸局としましても、地域公共交通の維持・活性化に向けて全力でサポートしてまいります。
また、地域公共交通の維持・活性化のためには、交通事業者における担い手の確保が重要です。九州運輸局では各交通モードにおける運転者不足の深刻化に対応するため、人材確保・育成に関する各業界の取組、各種支援制度等をまとめた「九州運輸局人材確保・育成対策応援サイト」を立ち上げる予定としております。併せて、セミナーの開催等を通じ、人材確保・育成に取り組む事業者を支援してまいります。
交通分野におけるバリアフリー施策については、九州運輸局管内においても「心のバリアフリー」社会の実現を目指し、東京オリンピック・パラリンピック競技大会のホストタウンの支援、小学生等を対象としたバリアフリー教室・講習会の開催等を実施してまいります。

次に、九州における観光の発展を推進してまいります。
昨年、九州観光は令和元年8月九州北部豪雨、日韓関係の冷え込みによる韓国インバウンドの急減等の困難な局面を経験した反面、ラグビーワールドカップ2019日本大会やローマ教皇の長崎御訪問等に際して国内外の多くの観光客に九州を御訪問いただくなど、明るいニュースもありました。本年は東京オリ・パラの開催を契機として、観光目的地としての九州の魅力を世界に発信していきたいと考えています。
他方で、大規模災害からの復興や韓国インバウンド急減に直面している九州観光に対しては、活性化に向けた更なる取組が必要です。特に、韓国インバウンド急減に対しては、自治体、民間ベースで進められている日韓交流の取組も踏まえつつ、観光関係者との対話を継続してまいります。併せて、中国、台湾、香港からの個人旅行客、成長著しいタイ、シンガポール、ベトナムなどの東南アジア諸国、更には欧米豪からの九州への訪問が拡大するように、それぞれの市場のニーズを正確に把握し、観光資源の掘り起こし、プロモーションを着実に進めてまいります。
そして、九州が世界的な観光目的地へと変貌するためには、各地の受入能力等に配慮しつつ、地元の自然、歴史、文化、食を尊重した体験型の観光や環境負荷を軽減した観光などを推進することが必要です。まちあるきエリアや宿泊施設、公共交通などにおける多言語対応、Wi-Fi環境整備、キャッシュレス対応、トイレ環境整備、ユニバーサルデザイン等の取組を支援することで高水準な受入環境を整備し、九州観光推進の歩みが確かなものとなるよう努めてまいります。

続いて、運輸の各事業分野については、次のとおり取り組みます。

鉄道事業については、近年の災害の激甚化を踏まえ、大型台風等に伴う計画運休を実施する際の利用者への情報提供の在り方について、昨年7月に取りまとめを行いました。当該取りまとめを踏まえ、各鉄軌道事業者においては外国人旅行者への情報提供の多言語化を含め、利用者への適切な対応をお願いしたいと考えております。

バス事業については、路線の維持・確保に必要な補助等を行うとともに、路線の再編等による運行の効率化・生産性の向上を図る事業者を支援してまいります。さらに、利用者利便の向上に向け、MaaS、AIを活用したオンデマンドバス等の新たなモビリティサービスの導入等を含め、先進的な取組を進める事業者に対し、必要な助言等を行ってまいります。
また、タクシー事業については、労働力不足を背景とした運賃改定の実施に当たり、改定の趣旨を踏まえ労働条件の改善にも取り組んでいただくよう促すとともに、改正タクシー特措法に基づく事業の適正化、利用客の利便性向上やタクシー需要の喚起につながる取組の活性化、経営環境の改善等を図ってまいります。

トラック事業については、長時間労働や運転者不足の深刻化を踏まえ、業界全体の働き方改革の動きを促進し、物流の効率化・生産性の向上を図ってまいります。特に、九州各県で開催する「トラック輸送における取引環境・労働時間改善地方協議会」において、取引環境の適正化に向けたガイドラインやホワイト物流推進運動を幅広く展開し、長時間労働の抑制・取引環境の改善等に取り組んでまいります。
また、物流分野全体としては、局内に設置した「物流効率化政策推進本部」を中心に、九州の地域特性を活かしつつ、モーダルシフトの推進や共同輸配送、物流拠点の整備、貨客混載の取組の推進など、物流の効率化・省力化に向けた取組を支援してまいります。

海上交通分野については、局内に設置した「海上旅客航路維持・活性化推進本部」を中心に、航路利用の促進や経営改善に向けた取組を進めてまいります。特に、内航海運業については、船員不足・高齢化、船内の労働環境の改善や働き方改革への対応など様々な課題に直面していることを踏まえ、登録船舶管理事業者制度の活用促進等、事業基盤の強化を図るべく必要な対策を講じてまいります。加えて、本年1月から船舶の燃料油に関するSOx規制が強化されたことから、航路事業者が必要な適合油が安定的に確保できるよう、関係者と連携しながら必要な取組を進めてまいります。

港湾運送事業については、九州の港湾が地理的・歴史的優位性を生かし、成長著しいアジアの活力を取り込みながらアジアのゲートウェイとしてより一層飛躍するため、地域の産業界と連携・一体となってその発展に努めてまいります。
また、造船・舶用工業については、船舶の開発・建造から運航までの全工程で情報技術等の積極的な活用を目指す「海事生産性革命(i-Shipping)」と海事人材の育成・確保を両輪として、造船業の生産性向上を推進してまいります。特に、昨年4月より特定技能外国人の受入れ制度が創設され、造船・舶用工業における外国人材の受入れが進んでいるところ、九州運輸局としましても、地域造船業の円滑な人材確保に向け、尽力してまいります。

最後に、各交通モードを支える基盤的な業務については、次のとおり取り組みます。

交通事業者の事故防止については、より一層の安全対策を講じていただくよう関係事業者に促すとともに、保安監査や運輸安全マネジメント評価等を通じて、安全・安心な輸送の確保に取り組んでまいります。交通業界全体で飲酒に関する規制の強化も強く求められており、関係事業者においては、より一層の安全対策を講じ、事故防止の推進をお願いしたいと思います。
また、海上交通の安全確保については、船舶検査、船員の海技資格・乗組体制の審査、運航管理監査等を的確に実施し、船舶事故の防止に取り組むとともに、小型船の安全指導や各種講習会の実施を通じて事故防止に関する啓発活動に取り組んでまいります。さらに、外国船舶については、ポートステートコントロール(寄港国による監督)を適切に実施し、構造・設備、乗組員の配乗等が条約で定められた基準を満たしていない船舶の排除に努めてまいります。特に、東京オリ・パラが開催される本年は、保安対策の実効性の確保・向上を図るため、クルーズ船への立入検査を強化してまいります。

自動車の検査・登録については、制度の適正な運用を図るとともに、自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)の普及啓発に努めてまいります。さらに、昨年の道路運送車両法の一部改正を踏まえ、自動車特定整備に関する新制度が円滑に施行されるよう、関係者と連携してまいります。

以上のように、九州運輸局では「運輸と観光で九州の元気を創ります」をキャッチフレーズに、職員一丸となり、社会・経済情勢の動向に対応した課題、ニーズ等に対して的確に取り組んでまいる所存です。
結びに、九州の発展と皆様方の御健勝と御多幸をお祈りして、新年の御挨拶といたします。

2020年01月03日